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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)834号 判決 1948年11月25日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人神戸章上告趣意第一點について

しかし、判決書に記載すべき被告人の住居は、被告人を特定する事項たるに止り、もとより罪となるべき事実ではないから、これを認めるのに證據調その他特別の審理を要するものではなく、記録その他について適宜これが取調を爲すを以て足るものといわねばならぬ。そして、本件では、被告人は原審公判において、その住居を甲府市古上條岩田長作方と陳述したことは所論のとおりであるが、同時に、被告人は自己の經歴は司法警察官の訊問調書第五問答において供述した通りであると述べ、且つその第五問答によれば、被告人の住居が不定であることを認めうるのみならず、第一審公判において、被告人は明らかに住居は不定と陳述しているのであるから、原審が被告人の住居を不定と認め、その旨判決書に表示したからと言って、何等手續に違法はない。しかのみならず、假りに原審が被告人の住居に對する判斷につき誤りがあったとしても、前段説示のごとく判決に影響を及ぼす事柄でないから、所論は上告適法の理由とならないものである。(その他の判決理由は省略する。)

よって刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅)

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